放射線治療(X線/電子線)の診療報酬について

RYO-RT

実習生に質問です。
放射線治療を受ける外来患者さんはどのくらいの代金を会計で支払っているでしょうか。

目次

放射線治療の診療報酬について

ちなみに、今回の内容は放射線治療現場の技師としては知っていてあたりまえの内容になります。

保険診療を行う医療機関ではいろいろな診療に対する対価(診療報酬)は厚生労働省によって全国一律で点数表が定められています。
また、この点数は1点=10円として医療費を計算するよう定められています。
この点数表は大きく3区分(医科・歯科・調剤 )で構成されており、放射線治療は医科診療報酬点数表に記載されています。

※令和4年の診療報酬点数表をもとに記載しています

筆者はネットでささっと調べられるので しろぼんねっと を使用してよく調べています。

ズバリ、照射に関する診療報酬は??

高エネルギー放射線治療 

1回目 (←1か所目という意味)
(1) 1門照射又は対向2門照射を行った場合 840点

(2) 非対向2門照射又は3門照射を行った場合 1320点

(3) 4門以上の照射、運動照射又は原体照射を行った場合 1800点

(4)強度変調放射線治療(IMRT) 3000点

2回目 (←2か所目という意味)

(1) 1門照射又は対向2門照射を行った場合 420点

(2) 非対向2門照射又は3門照射を行った場合 660点

(3) 4門以上の照射、運動照射又は原体照射を行った場合 900点

※施設要件があります

 と、いう様に定められています。
同時期に2か所治療する場合、2か所目は半額という事です。
ちなみに、3か所目以上がある場合は・・・・・無料です!2か所目以降は算定できません

基本的には照射方法×治療回数で診療報酬が決まる仕組みになっています。

 例えば、
 対向2門照射で25回治療を行う場合の体外照射の診療報酬合計は 840(点)×25(回)=21,000(点) 1点が10円なので
 つまり、210,000円が診療報酬の金額になるわけですね。
 ※実際に請求される額は外来では照射の都度、そのうちの負担割合に応じた額になります。


ここで近年一部のがんで推奨されている「寡分割照射」の診療報酬について考えてみます。

寡分割照射 とは??

標準照射は、例えば乳房温存術後に対して標準的に行われている方法で、
温存乳房全体に50Gy(グレイ)という線量を25回に分割して(すなわち1回2Gy、5週間)照射することが標準的とされてきました。

※日本放射線腫瘍学会では乳房は寡分割照射を推奨していますので、(2023年現在)25回照射を標準的という表現は適切でないかもしれません。

一方、寡分割全乳房照射は、3-4週間で終わる方法で、米国放射線腫瘍学会のガイドラインでも、通常分割照射と寡分割照射は、治療成績や副作用に関して同等の成績とされています。例えば、カナダでは寡分割全乳房照射(42.5Gy/16回/22日)と標準照射(50Gy/25回/35日)の無作為化比較試験が行われ、10年局所再発率や10年生存率に差がないことがわかっています。

それらを鑑み、日本では42.56Gy/16回が近年良く用いられています。

詳しくは乳がん診療ガイドライン2022版を参照すると良いと思います。


寡分割全乳房照射と標準照射の違いは照射の回数と期間にあります。

これらの方法はどちらも乳がんの再発を減らし生存率を改善するとされ、術後に行うことが推奨されています。

寡分割全乳房照射は治療期間が短くなるため、患者さんにとってはより優しい治療になると言えます

ただし、照射回数が少なくなるので、寡分割照射では単純に得られる診療報酬が減ってしまいます。
そこで、以下のようなものが用意されています。

1回線量増加加算

①1回の線量が2.5Gy以上の全乳房照射を行った場合は、一回線量増加加算として、690点を所定点数に加算する
②1回の線量が3Gy以上の前立腺照射を行った場合は、一回線量増加加算として、1,400点を所定点数に加算する

※加算算定には施設要件があります

つまり、照射回数が少なくなった分を補うための加算が用意されているわけですね。上記の加算は照射の度に算定ができます。

乳房の照射では従来の25回照射分の照射に対する診療報酬は 21,000点でしたよね。
これが16回になってしまうと 840(点)×16(回)=13,440(点) になります。
ここに一回線量増加加算として、690点を毎回加算できますので 690(点)×16(回)=11,040(点)
つまり 寡分割照射16回+増加加算で13,440点+11,040=24,480点となります。

特殊な照射の診療報酬は??

RYO-RT

他にも様々な照射方法について調べてみます

定位放射線治療

装置の違いによる報酬区分があります。

定位放射線治療

1)ガンマナイフによる定位放射線治療を行った場合      50000点

2)直線加速器(マイクロトロン含む)による定位放射線治療を行った場合    63000点

3)直線加速器(マイクロトロン含む)による定位放射線治療で2)以外の場合  8000点 

※施設基準あり

※定位放射線治療は固定装置を取り付ける際等の麻酔、位置決め等に係る画像診断、検査、放射線治療管理等の当該治療に伴う一連の費用は所定点数に含まれ、別に算定できない。

定位放射線治療呼吸性移動対策加算

定位放射線治療において呼吸性移動対策を行った場合は、
 1)動体追尾法   10,000点
 2)その他    5,000点

※呼吸性移動対策とは、呼吸による移動長が 10ミリメートルを超える肺がん、肝がん又は腎がんに対し、呼吸性移動を5ミリメートル以下に低減できる対策のこと。

全身照射

全身照射を行った場合、30000点

 全身照射は造血幹細胞移植を目的として行われるものに限る。骨髄移植のための前処置ですね。

照射自体の報酬は分かりました。
そのほかにも管理料って言うのもあるのですが・・・

放射線治療管理料とは

放射線治療の照射料に加え、多くの医療施設では放射線治療管理料といった診療報酬を算定しています。 これも施設要件があります。

放射線治療管理料

① 1門照射、対向2門照射又は外部照射を行った場合         2700点
② 非対向2門照射、3門照射又は腔内照射を行った場合        3100点
③ 4門以上の照射、運動照射、原体照射又は組織内照射を行った場合  4000点
④ 強度変調放射線治療(IMRT)による体外照射を行った場合    5000点

線量分布図を作成し、外部照射、腔内照射又は組織内照射による治療を行った場合に、分布図の作成1回につき1回、一連につき2回に限り算定する。

ちょっと難しいですね。
簡単に言うと、線量分布を作成すれば外照射、腔内/組織内照射において管理料を算定して良いですよ、と言ったところです。
具体的には、3次元放射線治療計画(CT)やX線透視画像ベースの2次元放射線治療計画を治療計画装置でプランニング(線量分布作成)をすれば算定できます。
さらに一連で2回までと書かれていますので、プラン変更した際ももう1回まで算定ができます。というモノです。

また、X線/電子線外照射または腔内/組織内に関しての料金なので粒子線や他の方法では当てはまりません。

各種加算について

他にも様々な加算が用意されています。各々算定用件施設基準がありますので、それらの要件を満たし届出していれば算定可能になります。

術中照射療法加算

  術中照射療法を行った場合は、患者1人につき1日を限度として、5,000点を所定点数に加算できる。

体外照射用固定器具加算

  体外照射用固定器具を使用した場合は、1,000点を所定点数に加算できる。

 いわゆる「シェル」ですね。当院では、照射終了時に患者さんが希望すれば持ち帰ってもらっています。

画像誘導放射線治療(IGRT)加算

※施設基準あります

 1)体表面の位置情報によるもの 150点
     乳房照射に関して体表面照合で位置合わせをした場合に算定 近年ではIGRTではなく「SGRT」と言っています。

 2)骨構造の位置情報によるもの 300点 
     4門以上の照射、運動照射、原体照射、で画像照合で位置合わせをした場合に算定。よく骨照合と言っています。

 3)腫瘍の位置情報によるもの 450点
     4門以上の照射、運動照射、原体照射、で画像照合で位置合わせをした場合に算定。臓器照合と言っています。

 これらIGRT加算は1日に1回まで実施の都度算定できます。

体外照射呼吸性移動対策加算

※施設基準あります

  呼吸性移動対策を行った場合は、150点を所定点数に加算する。

遠隔放射線治療計画加算

  常勤の放射線治療専任医がいない施設で、急激な病態の変化や臨時的な照射計画の変更が必要な場合の放射線治療を行う際に、別の施設の医師の支援を受けて照射計画を作成する場合に算定できる加算。

 上記の場合に遠隔で放射線治療計画支援を受けた場合は、2,000点を加算する。

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